中国でのiPhone発売交渉とWi-Fi機能

中国の通信業者の調べによれば、既に中国国内で100万台を超える個体が使用されているといわれるAppleの携帯電話端末「iPhone」。今まで中国では正式にiPhoneの発売は行われていないため、現在稼働しているといわれているものはおそらくシンガポールや香港などSIMロックのかかっていない国の物を輸入したか何らかの方法でSIMロックを解除したものだと思われる。それだけiPhoneを使いたいという人たちがいるのだから中国には正式なiPhone国内発売を待っている人たちがたくさんいるであろう。そして2009年8月28日、ついに中国の通信事業者大手の「China Unicom」がAppleと正式にiPhoneの販売契約を結んだと発表したのだ。以前は中国最大のChina Mobileが販売契約をするのではという意見もあったが、Appleの提示したロイヤルティ比率を拒んだことや現在の移動体通信契約の80%以上がプリペイド契約であることなどがネックになったと考えられる。それに対して中国第二位のChina Unicomは契約数こそChina Mobileに劣るものの、およそ半数以上が料金後払いでの契約であったことがChina Unicomと契約した理由ではないかといわれている。

Appleにとって中国でのiPhone発売はとても有望な市場であることはまず間違いであろう。これまでiPhone販売が行われなかったことの方が不思議なくらいである。もちろんAppleも中国側の通信キャリアも交渉をしていなかった訳ではない、今までも交渉は行われていたのである。ではなにが問題だったのか、答えはまだ噂の段階である中国用のiPhoneから見えてきそうだ。それは中国発売用のiPhoneにはWi-Fi機能がついていないという噂である。実際にWi-Fi機能廃止の話はあったようだが噂の段階なので付いていないと仮定した話として聞いていただきたい。かなり以前からこの噂は出ており中国向けのコスト削減なのではないかという憶測がされていた。しかし、実際にはもっと大きな問題があったのだと思われる。

 

まずあげられるのが、Wi-Fi通信で非公式のVoIPアプリを使用されることにより自社の通信網での利益が減ってしまうのを恐れたというものである。これは中国の問題だけではなく、現在App StoreがGoogle Voiceを承認しないことと関わってくる。キャリアが顧客に自社の回線を使ってもらい料金を支払ってもらいたいのは当然である。だかユーザー側から見れば、もしWi-Fiを使って無料で通話できるのであればなるべくそちらを使って無料で話したいと思うのは当然だ。
つまりこの通話料の支払いを維持するためにWi-Fi機能を外すようにAppleに要望して長く合意に至らず遅れていた可能性がまず一つ。

そしてもう一つ、中国には国内企業が管理するWAPI(Wired Authentication and Privacy Infrastructure)プロトコルという独自暗号化規格が存在する。中国でWi-Fi機能を持った危機を発売するためにはこのWAPIの基準を満たしていなければならない。WAPIの規格は中国以外ではほとんど浸透していないためiPhoneも未対応なのである。今までもNokiaやSAMSUNGなどが中国で発売する端末はWAPI対応ではなくWi-Fi機能自体を外しているため、iPhoneも同様にWi-Fiを外す道を選ぶ可能性が高いのではないかと考えられる。ただし、以前のiPod touch 2ndのBluetoothようにチップのみを搭載しておき後から対応されるという可能性も十分にあり得るという点は考慮しておきたい。

ではWi-Fiがなくなると、現在各国で発売されているiPhoneとどう変わってしまうのだろうか。ここでは簡単に思いつくものを3つあげてみる。
 
(1).Wi-Fiを利用した外部機器との通信ができない
(2).iPhone上でのiTunes StoreやApp Storeの一部サービスが利用できない
(3).Wi-Fi必須アプリは使用できない
 
まず(1)については先日DockやBluetoothが解禁になったので外部機器との連携はWi-Fiにそれほど依存しなくても大丈夫だと思われる。次に(2)であるが、これは一部の国のように3G/EDGEでのiTunes Store使用を可能にすればある程度は解決できるのではないかと思う。だか最近になって驚きの話が出てきた。それは中国版iPhoneにはApp StoreなどのAppleの提供する販売サービスを導入しないというものである。どうやらChina Unicomの運営するオンラインアプリストアを利用するようにしたいということのようだが、これも交渉に時間のかかった原因ではないかと推測してしまう。もしこれが本当ならば(3)などは関係なくなってしまうであろう。中国の方がApp Storeをどのように思っているかはわからないが、App Storeを使いたいという声が上がってくるであろうし本当にそれをiPhoneとして受け入れられるのかは少し疑問に思う点ではある。

Wi-Fi機能が本当に消えているかは別としてもChina Unicom発表によれば今年の第四半期にも発売とのことなので着々と準備が進んでいるものと思われる。
もし本当にWi-Fi機能が廃止されたiPhoneが発売された場合は、中国での廃止に対する反応によっては今後のiPhoneの通信機能についても大きく関係してくる可能性は大きいのではないだろうか。

著:伊織 ゆうき


参考文献

『iPhone』、10月に中国で発売か? 中国ニュースサイトが報道」インターネットコム
中国聯通:「APP Store」は導入せず」China Press